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2006年12月09日

●既存プロバイダはFONを受け入れるしかない

モデムの無料配布がスタートした。別途送料がかかるのは仕方ないにしても、0円の癖に代引き手数料の謎というなかなかの話題を振りまいているようだ。日本全国一律の送料ということがネックになり、運送会社のシステム上の都合から送料着払いという選択肢が使えなかったということなんだと思う。

それはともかくである。先日のエントリーにも書いたように、ぼくは既存の大手プロバイダがFONに過剰反応を示すことはないと考えている。理屈の上でユーザーがFONと契約しないように促すことは可能だし、すでに契約してしまったユーザーに何らかのアクション(極端な話をすれば、強制的に解約させられたり、裁判を起こされたりということ)を起こすことは至極まっとう、きわめて当たり前の企業行動に思える。

実際、えぴたふ氏がお骨折りになった「■FONが使えるプロバイダを求めて 」によれば、多くのプロバイダがFONの利用は禁止という見解を示しているそうだ。ただしこれはあくまで現時点での見解であり、ぼくはじきにFONを受け入れるプロバイダが増えてくると睨んでいる。

その理由の一つは、前回も述べたようにプロバイダ業が過当競争の時代にあることだ。たとえば、FONが提携を発表したBB.exciteの存在が他社には大きな壁となるはずだ。既得権益を守ろうと、既存のプロバイダが珍しく手を結んで一様に「FON禁止」を合唱したところで、BB.exciteのように一つでも突破口があればそれは意味を成さなくなる。Bフレッツに入っているユーザーであれば他社からBB.exciteに乗り換えることなどたいした手間ではないし、ADSLなどの別種サービスの利用者ならば、BB.exciteとBフレッツの同時申し込みで大幅な一時割引などのメリットも享受できるわけで、この一件が引き金になってユーザーの移動が起こりかねない。いや、むしろユーザーは乗り換えの口実を待っていると思った方がいいだろう。新聞でもプロバイダでも乗り換えた方がお得という妙な世の中であり、それは周知の事実なのだから。さらに、FONは各プロバイダに対してネゴシエーションを行っているようでもある。となると、おそらくプロバイダ各社は戦々恐々として他社の動向を探っているはずだ。大手のいずれかが「FON対応」の旗を掲げた瞬間に、「FON禁止」プロバイダは苦しい立場に置かれることになるだろう。

プロバイダがFONを許容するだろうという推論のもうひとつの根拠は、今回日本で募集されるのが「Linus(ライナス)」と呼ばれるユーザー形態に限定されていることだ。Linusは自らアクセスポイントを提供し、また他ユーザーのアクセスポイントを使用する権利を持つユーザーであって、つまり、そもそも光なりADSLなり何からのアクセス回線を持っていることが条件になる。ということは、ブロードバンドの接続サービスによって主に利益を得ている多くのプロバイダと、現在日本でスタートした形でのFONとは、無線LANサービスの部分では市場を食い合うことになるものの、本業として真っ向から競合するということにはならない。

FONと敵対することは、リスクは多く利はない。反対にFONを許容することは、リスクはなく損が少々生じる。しかし、後者のデメリットは、早々にFON対応を謳うことでメリットに転化することも可能だ。自社の無線LANアクセスポイントにFONのアクセスポイントを加えることもできるだろう。そうすればサービス内容の差別化も図れる。

これでもFONを拒絶することが出来るプロバイダがどれだけいるというのだろうか。

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